金剛界曼荼羅
金剛界曼荼羅を掛ける位置は、西側(正面向かって左)
界とは基体・要素・本質という意味で、金剛とは堅固な性格を意味しています。
物を打ち砕く武器として用いられていたもので、それが心の中の煩悩を砕き、除く智恵と考えられ真理を意味し、金剛界は『真理を本質をするもの』という意味になります。悟りの智恵を現しています。
胎蔵界マンダラと2つで1つになり本来は一体なのですが、判りやすくするために二つに分けていると言われています。そして胎蔵マンダラの『理法身』に対して、金剛界マンダラを『智法身』といいます。『智法身』とは自分から見た真理・主体的なという意味になります。人間が真理の世界へ行くためのプロセスで、金剛界マンダラは人間のほうから仏のほうに向かうのです。
金剛界曼荼羅は金剛頂経(こんごうちょうきょう)というお経を基に作られていますが、その中で最も基本的な経典の『真実摂経』(しんじつしょうきょう)に基づいて描かれているのが、金剛界の現図曼荼羅(現在の曼荼羅)です。
弘法大師 空海は言葉や文字で容易に示す事ができず、衆生には感得しがたいので、絵図で示した物と言っておられます。
曼荼羅は仏像の三尊形式から発展し、中央が本尊(お釈迦様が多い)、右側北方に観音菩薩のグループ、左側南方に金剛手菩薩などのグループの構成で、中央が仏部・右が蓮華部・左が金剛部という胎蔵界曼荼羅では三部構成であったが、信仰対象の仏様が増加すると、三部構成の枠では整理できないので、新たに宝部・羯磨部を加え五部構成になりました。
重要な思想となっているのが五相成身観です。五段階の成就法である『五相成身観(ごそうじょうしんかん)』という、悟りに至る真実の修行法を解いています。
お釈迦様が菩提樹の下で修行をしていた時に、一切如来が現れ「一切如来の真実を知らないで、何故そんな苦行に励んでいるのか」という問いかけに、釈迦はハッと気が付き「一切如来の真実とは何でしょうか」という質問に、一切如来は悟りに至る真実の修行方法である『五相成身観』の教示を授ける。
五相成身観によって仏となったお釈迦様は、報身 毘盧遮那如来となり、色界の頂きに至り、一切如来に囲まれて悟りの世界を現す。一切如来は阿@如来・宝生如来・無量寿如来・不空成就如来の四仏として現われ、毘盧遮那を中心とした曼荼羅が成立する。
↓四 印 会→ |
←一 印 会→ |
←理 趣 会↓ |
↓供 養 会↑ |
↓成 身 会 |
↑降三世会↓ |
→微 細 会↑ |
←三昧耶会↑ |
↑降三世三昧耶会 |
金剛界曼荼羅には二つの見方があります。
1.中央の成身会から下の三昧耶会に入り、右回りにをし、最後に降三世三
昧耶会に至る。これは仏様が衆生教化に行くということです。
仏→菩薩→明王→衆生という教化のあり方を示している(向下門という・赤の矢印)
2.今度は逆で右下の降三世三昧耶会から上の降三世会に入り、左回りを
し、最後に成身会に至る。
これは衆生が仏になる為に向かう修行の過程を現しています。
衆生→明王→菩薩→仏という修行のあり方を示しています(向上門という・青の矢印)
九つの部屋から成り立っているので、九会曼荼羅(くえまんだら)ともいいます。
各曼荼羅ごとに、曼荼羅の出生・入壇作法(曼荼羅に入る方法)・阿闍利の作法・悉地智・四印などが必ず説かれていて、各曼荼羅ごとのストーリーになっています。
【主な仏様】
[五智如来]
中央=毘盧遮那・東=阿@如来・南=宝生如来・西=無量寿如来・
北=不空成就如来
五智(ごち) 仏の智恵のこと | ||
毘盧遮那 | 法界体性智 ほっかいたいしょうち |
真理の世界の本性を明らかにする智慧。 宇宙の自然界の現象が、そのまま如来の意思と姿 であることを、すべてのものによって表現されている 智慧 |
阿@如来 | 大円鏡智 だいえんきょうち |
鏡に映るように全てものを、そっくりそのまま映して いる智慧。物事の成り立ちから移り変わり、結果に 至る姿を正しく見通す智慧 |
宝生如来 | 平等性智 びょうどうしょうち |
それぞれ違った姿・形で現れているが、全てのもの が平等であると見通すことのできる智慧 |
無量寿如来 | 妙観察智 みょうかんざつち |
それぞれに違った姿・形で現れており、みな違った 特徴・個性があると見通す智慧 |
不空成就如来 | 成所作智 じょうそさち |
なすべき事を成し遂げる智慧 |
[一切如来]
常に登場する一切如来は、上記の五智如来を総称した仏様です。
[四 仏]
完璧な毘盧遮那の性格を四つに分けた仏様。
阿@如来は毘盧遮那の永遠性を形に表した仏様。
宝生如来は人間の持っている価値観を見つけ出そうという仏様。
無量寿如来は毘盧遮那の慈悲を現した仏様
不空成就如来は毘盧遮那の実行力を表した仏様。
[四波羅蜜菩薩]
毘盧遮那の前後左右に配されている菩薩。
毘盧遮那を供養する為の菩薩で、四仏の智慧から出生したので、諸尊の能母であるから女形である。
[十六大菩薩]
毘盧遮那の働きを展開したもの。
阿@如来・宝生如来・無量寿如来・不空成就如来の各四仏の前後左右に配されている菩薩です。
各四仏の四方に出生する菩薩たちを『四親近菩薩(ししんごんぼさつ)』という。
親近とは重要な人に付随して、その働きを助け役割を分担する。
四仏の四つの徳を展開させたもので、阿@如来の四親近菩薩は『菩提心の徳』 宝生如来の四親近菩薩は『福徳荘厳の徳』 無量寿如来の四親近菩薩は『智慧の徳』 不空成就如来の四親近菩薩は『方便の徳』と配される。
元来は密教以前(顕教)の存在であった一切成就義菩薩が、一切如来の加持を受けて大菩薩となり、毘盧遮那如来の媒介を経て、金剛界曼荼羅に出生して各自適切な位置を与えられる。
[内四供養菩薩]
毘盧遮那が四仏の供養に応えて出生させた菩薩。
毘盧遮那が悟りの徳に応じ、自らの内証から四供養菩薩を出現させて、その徳を供養する。四仏の悟りの境地の徳がそれそれに異なるために、毘盧遮那は四菩薩を現した。
[外四供養菩薩]
さらに毘盧遮那を供養する為に出生させた菩薩。
四仏は自己の悟りの境地の徳をもって、毘盧遮那を供養する為に本誓により四菩薩を現した。その悟りの境地の徳がそれぞれ違うので、四種の菩薩を現した。
[四摂菩薩]
毘盧遮那が外供養菩薩に供養に応えて出生させた菩薩。
全ての衆生を教化し、救う徳を具えている。一切衆生を鉤で釣り、索で引き寄せ、鎖で縛り、鈴で喜ばせる四つの徳が具わっているという。
曼荼羅は各界ごとに下記の構成になっています。 しかし、簡単になったり省略されている界もあります。 |
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序 分 | 通 序 | 毘盧遮那を説いている。 |
別 序 | 曼荼羅に登場する諸仏達を説いている。 | |
正宗分 | 五 相 成 身 |
五段階の成就法である『五相成身観』という、悟りに至るための真実の 第一段階 通達菩提心(つうだつぼだいしん) |
三十七尊の出生 | 十六大菩薩の出生 四波羅蜜の出生 八供養の出生 四摂菩薩の出生 |
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一切如来の集会 | 諸仏たちが、毘盧遮那の許へ集まる。 金剛界曼荼羅を形成する。 |
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灌 頂 作 法 | 師匠が弟子に対して行う作法。 金剛界曼荼羅も説き示している。 |
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弟子の入壇作法 | 灌頂を受けた弟子が、説き示された金剛界大曼荼羅に入 る為にの作法。一切の衆生界を完全に救済すること。 一切衆生を利益し、安楽にするという最上の悟りを達成す ることを目指す。 |
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悉地を成就する 智慧 |
悟りを完成させるための智慧を説いている。 ご利益を生起させる悟りの智慧・神通の悟りを成就・持明 を成就する智慧・一切如来の最高の悟りを完成させれ為 の智慧のうち、弟子が望むものが授けられる。 |
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四種印の智慧 | 弟子に印を学ばせる。印の結び方や功徳を説いている。 | |
諸 儀 則 | 実践作法を簡略に説いている。 作法の次第を儀軌という。 |